ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

朝日

周囲には緑の丘がある。

朝日はすでに光っている。

茶色いチョコボ達は草を食べたり、走り回ったり、こちらを見たりしている。

柵から首を出している一羽をなでていた老人は話し出した。

「コイツは…甘えん坊なんだぁ。友達と離れたがらね〜んだわ。…そいつの名前は『プックル』いうだ。オラの飼ってるなかで、一番賢いチョコボだで〜。新品の鞍(くら)や手綱(たづな)を付けといたよ。『ナバルの町』への道はそいつが知ってっから…旅人さんは乗ってるだけでいいだぁ。…ビヒモスとか、おっかねぇやつに出くわしても『プックル』が勝手に逃げてくれっから〜平気だもんよ」

チョコボへ騎乗した女は頭を下げた。

「…ほんとに…すみません…トンヌラさん…」

「だはははは…。いいんだで〜。これも…ほぉら…持ってってくんろ」老人は肩からかける布製バッグを女へ渡した。

「…?これ…は…?」女の問いに老人が答えた。

「茶の入った水筒と、腹いっぱいになる煎(い)り豆を入れといたで。腹へったら、ぼりぼり食うといいだ。あとはその下さ、ルクも入ってるだよ」

「え…ル、ク…ルク……?」女は首をかしげた。

「ルクってのは…町のお店なんかで使うもんだ。そこには紙のやつ、入ってるだ」老人の言葉が終わるよりも先に女はバッグを開け、中身を見るや声を上げた。

「…ぇ、えッ、えぇ!??か、紙のなんて、初めてみたけど…これ、現金ですよね??…こ、こんなに…くれるんですか…!?これは…イヴァリースのギル、みたいなものでしょう…。あ、あたし…なんて…言ったらいいか……」

困った女へ老人は笑顔で返した。

「気にしねぇ〜、気にしねぇ。オラさ、一人暮らしだもんよ。ルクも余っちまってるんだわ。それに、ここさいるチョコボを一羽、売っぱらえば…まー、その袋8つ分ぐらいのルクがもらえるだ〜。半年ぐれえ前に…軍隊さ、十羽売ったんだ。それでよ、ルクはたんまりあるんだで。…ルクなんて、紙か金属だもの。必要なやつが必要なだけ、使えばいいだ。おっ…そうだ、コレを…忘れちゃいけねぇだな」

「………。…赤い…実??」申し訳なさそうな女へ老人は濃い赤色の実を手渡した。

「もしも…道に迷っちまったり、誰も助けてくんねかったら…コレをコイツさ食わせてやって、オラの牧場まで戻ってきんさい。その実を『プックル』に食わせると、オラのところまで『プックル』は帰ってくるだ。…こ〜れで、安心だべ」笑う老人に赤色の実を握りしめた女は言った。

「……。……ありがとうございます、トンヌラさん…。こんなに、こんなに…良くしていただいて…。あたし…この、御恩は決して忘れません…。行って…みます…町に…」

老人は進行方向を指さした。

「『ナバルの町』は近くに、でっけぇ港のある町だぁ。オラも、たま〜に行くんだけんども。…旅人さんのちからになってくれる人さ、会えるといいだな。ま〜、ダメだったら戻ってきんさい。他のやりかたもあるかも、しれねぇだよ」

「……はい。…あ、あたしの…名前…まだ、言ってませんでした。あたしは…ラヴィアン、といいます。遅くなって、ごめんなさい…トンヌラさん…」女は涙をぬぐって、自己紹介した。

「そ〜か。そ〜か。旅人さんは、ラヴィアンっていっただか。オラはチョコボじいさんのトンヌラだ。じゃ〜、行ってみるといいだぁ。しばらくは天気もいいと思うで」

老人とラヴィアン、と名乗った女は握手を交わした。

「…はい。…本当にお世話になりました。本当にありがとうございます、トンヌラさん。それじゃあ…行きます…さよう、なら…」女はバッグをぼろぼろの白いマントの上から肩へかけて、チョコボを進ませ始めた。

「おぅ〜。さいなら〜、旅人さん。困ったら…帰ってくるといいだぁ。じゃあな〜〜」老人は両手をふって、女を見送った。

女も涙を流しつつ、大きく手をふった。

まだ朝霧が残る草木の生い茂るけもの道を茶色のチョコボは進んでいった。

薄い霧は丘を覆っており、小鳥の鳴き声は一人で泣く女の耳にも届いた。

他人を疑うことを知らない純朴(じゅんぼく)すぎる老人の優しさに胸をうたれた女の心の奥底には、これから行く場所に対する不安感が居座り、何色もの絵の具が混じりあった皿のようになっている。

空にある太陽は女の生まれた国でも、この異国の山中でも変わらずに大地を照らしていた