ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

チョコボじいさん(02)

「いや〜、久しぶりだで〜。オラ、ヨメさんが死んじまってからさ…ずっと一人で食ってたからよ。オラの娘たちも…嫁いでいってから、ここさ戻ってこないかんな〜。一人で食うよりも…やっぱ、二人で食うとうめえもんだよ〜〜」

大喜びしている老人が作ってくれた野菜料理を女は食べてみた。

……おいしい。

火を通してある野菜はシャキシャキしていて、それらに加えられている味付けも絶妙に合っていた。

茶褐色のソースがかけられた紫色の野菜の炒めものを口に運ぶ女は「おいし〜です、おいし〜です、トンヌラさん」と笑った。

「そりゃ〜いかったぁ〜。旅人さんのお口にあって、よかっただぁ〜。オラ…ちっとばかし、酒も飲むとするだ。いいべか?」老人は客である女に確認をとってきた。

「どうぞ、どうぞ。飲んでください」女はすぐに返答した。

「ほいじゃ、飲むだぁ。この酒はよ…外に生えてる木からとれる実のお酒だでよ。ほれ…実が入ってるべ。この実は甘酸っぱいんだぁ〜」老人は琥珀色(こはくいろ)をしたビンから小さな杯(さかずき)へ液体を注(つ)いだ。

プーンと、甘い香りがした。

「……。トンヌラさん…あたし、こんなに食べちゃいましたが…何もお返しができません。…ごめんなさい……」女は頭を下げた。

「なんも、なんも、いいだよ〜。オラ、なにもいらね〜だ。チョコボじいさんは、旅人さんに会えただけでうれしいだぁ」酒を飲んだ老人は白い歯を見せた。

「……ありがとう…トンヌラさん…。あの…ここ…って…どこ、ですか?…どのあたり、なのかな〜って……」女は金属製の匙(さじ)を持ったまま、聞いた。

「おー、ここか〜。ここは、ロマンダ…だぁ。ロマンダの山奥よ〜」老人のセリフに女は驚き、古い食台にひざを打ちつけた。

「えッ!!!ロ、ロマンダッ!!??あ、あだぁあッ!!!」ガン、ガシャン、という音が響く。

「だいじょうぶけ〜?この木の台、硬いからよ。ケガ、しなかっただか?」老人は女を心配した。

「は、は、は…は、はぃ。脚は大丈夫です…。ふ、普通に…トンヌラさんと、お話してたから…びっくりしちゃって……」女は食器を元に戻してから、自らの脚をなでた。

「んーだな。話してたっけどもよ…。旅人さんは、どっから来ただぁ?空から落っこちてきた、だか?」老人は酒に口をつけた。

「………。……い、い、イヴァリース…出身、です……」女は独り言のように言った。

「おんや、まぁ…。海の向こうの…。あの国から…来たんかぁ。旅人さん…よく、無事だったなぁ…」老人はそう言い、酒を食台へ置いた。

「………はぃ」女はうつむいた。

「…そうか、そうだったのかぁ。……ん〜だなぁ、オラでも…何か、役に立てるといいな。……よーし、じゃあさ、今日は一休みしてよ…そいで、明日になったら…オラがチョコボに乗っけてやっからさ。それに乗って…山を降って、町まで行ってみたらどうだべか?こんな山奥にいるよりは…いろいろと分かるはずだで。人の足じゃ…どうやっても5日はかかっちまうしよ、道を間違えて迷子になったり、運悪くビヒモスに出会っちまったら、おしめーだぁ。…ここはよ、オラに任せてくれや、旅人さん」老人は女へ提案した。

「……いいんですか…見知らぬ、あたしなんかに…そこまで…」女は自国では到底考えられないほどの親切心に当惑した。

「いいだよ〜。オラはチョコボじいさんだからよ。旅人さんを助けてやりて〜だぁ」老人はにっこりした。

「………ぁ、り、がとぅ…ござ、ぃま…すぅ……」女は声を絞り出して頭を下げ、息を吐いた。

吐息と共に涙をもらした女の姿を戸棚の中から小さな白金(はっきん)製のチョコボが宝石によって造られた瞳で見つめていた。