ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

きえたもの(01)

ここには…………もう…………いることは……できない…………。

17年ぶりに旧友と出会った女性は、これまでの体験を相手へと語り聞かせた。

自らの名前を思い出し、自らの経験を話していった女性の内側で確立されていったことがある。

女性にみえてきたもの、それは女性自身が「自分を支える柱」や「自分を守る壁」といってもよいものであった。

女性が仲間たちと共に各地を転戦し、最後には異界へ行き、そこで『聖大天使アルテマ』というルカヴィの主(あるじ)を仲間と共に撃破するまでの経緯を伝えられたローラは「そんなことになってたなんて……」と、驚くばかりだった。

女性は自らの仲間であったラムザアグリアスのことも、ローラへ余すところなく伝えた。

ラムザという男性と自身の同期生アグリアスが恋仲となっていたことを聞かされたローラは、「そう…だったんだ…。だから…だから…なおさら、みんな…戻ってこられなくなって…。それで……」と、複雑な顔になってつぶやいた。

過去に生じた疑問が解消されたローラの様子を気に留めることもなく、さらに女性は機工都市ゴーグで発生した大爆発の件、南天騎士団団長を務めていたシドルファス・オルランドゥ伯爵の“真実”、イヴァリースを代表する武家の一つであった『ベオルブ家』の凋落(ちょうらく)の真相を含め、洗いざらいを明かした。

ほぼ女性の独擅場(どくせんじょう)が終わるや、ローラは話し始めた。

彼女の一人息子は、母親が語っていた時に【団長室】へ帰ってきた。

ローラの息子は母親が美麗な若い女性へいろんなことを話しているのを黙って聞いていた。

息子が食事をとっていると、母親はイスから立って隣の部屋まで行った。

しばらくすると母親は、黒くて曲線を描く平らな棒と封書を手にしてやってきた。

息子は黒い棒が比類なき名刀であることを母親からまだ教えられてはいなかった。

美麗な若い女性は座ったまま、ぼんやりしている。

まばたきをするぐらいしか動きがない女性を見た息子は不思議に感じた。

…母親が持ってきた黒い棒を目にした際の女性の表情は、なんともいえないものであった。

女性は次に母親から手渡された封書を読みだした。

数枚の紙をめくった女性は無言となり、その紙を母親へ返却した。

それから母親は明るい顔をつくって、女性に何度も話しかけた。

しかし、女性は僅かにうなずくばかりであり、これといって言葉らしい言葉を返さなかった。

困った母親は女性へ「…今日は疲れたんでしょ。しばらく、ここにいて身を休めるといいよ」と言い、女性をベッドに誘導した。

息子は「お姉ちゃん、なにも食べないの?お腹すいてないの?」と聞いた。

黙ったままの女性の代わりに母親は「食べたくなったら、食べるといいよ。いっぱい話したから疲れたの。今は横になって…」と返答した。

普段は母親が使用しているベッドで女性は眠ることとなった。

その日、城塞都市ザランダまで行っている父親のベッドで母親は眠った。

明くる日、定時に目覚めた母親と息子はそれぞれ身じたくを整えて、【団長室】を後にした。

具体的には、母親が部屋を出た後にその息子も部屋から出ていった。

テーブルには女性のための朝食が用意されていた。

昼になり、ローラが【団長室】まで戻ってきたら、すでに彼女はいなかった。

手付かずの料理はそのまま残されている。