ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

製粉業者の娘(04)

「…………」

ラヴィアンは生まれて初めて父親以外の男性に抱きしめられた。

彼女は少しもそれを嫌とは感じなかった。

ラヴィアンは大切なラムザのためなら、すぐにでも自らの身を投げ出す覚悟ができていたし、このラムザになら自分のすべてを捧げたい、とも感じていたのであった。

ラムザラムザで、これまで彼女へ感じていた想いが一気に高まってしまった。

しかし……ラムザにはアグリアスという女性が先にいたため、「ラヴィアンさんを好きになってはいけない、アグリアスさんが泣いてしまう…」と、彼は感じた。

そして…単純に女を守りたい、とも、男であるラムザは感じたのである。

ラムザはこの時…ラヴィアンもアリシアも大切に扱ってあげなければならない、と覚悟を定めた。

“三人姉妹”といってもよさそうな女たちは皆、ラムザを愛している。

……どれほどに僕は彼女たちに救ってもらっていることであろう。

戦場だけに限った話ではない。

…僕はギルをがっちりと抱え、僅かに『戦闘の心得』があるのみで、その他には何もできないし、分からないままにイヴァリース内を転戦している。

……言い換えるならば、僕はギルには困っていないゴロツキのようなものではないのか。

国内を荒らしまわる盗賊の一人と、それほど大差がない僕の側(そば)にいてくれるみんなは……僕とは比較できないほど、はるかに優れた人ばかりで…いつ、僕は見捨てられても……文句の一つも言えやしない。

…協力して一緒に戦ってくれている、ということは……僕を信じてくれているということなのだ。

仲間たちのその心に、僕は応えなければいけない。

……ラムザは彼を擁護し、涙まで流してくれるラヴィアンを自らの目で見て、ついにそれを理解するにいたった。

「……ラ、ラムジャさん…さ、さっきの……は…さ…ええと…泣いちゃって……あたし……」

「…いえ、いいんです。帰りましょう」

「………」

「………。素直に泣いたり、笑ったりできるあなたが、好きです」

「…!…!…!…!」

ラヴィアンは気まずそうだったが、ラムザは力強く彼女へ返答した。

二人の間には重い麻袋があり、一つの袋を二人で分担して運びながら男女は宿まで歩いていた。

空を飛んでいた鳥はねぐらに帰ったのか、もう姿が見えない。

夕日は完全に沈んでしまった。

しかし、ラムザの心の底には熱いものが赤々と燃えていた。

その熱量は脆弱(ぜいじゃく)な彼の心を支えるには十分すぎるほど、熱かった。