ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

製粉業者の娘(01)

「あ!!…これ……ウチの小麦粉だ!」

店内で使う専用のかごを手に下げていたラムザはラヴィアンが声を上げたため、振り返った。

「……うちのこむぎこ??」ラムザが返す。

「そう、そう。……ほら、紙袋に赤い花のマークがあるでしょ?……あーー、この袋のにおい、なつかしい〜。…ウンウンウン。……この町にも運ばれているんだね〜」

茶色い袋の香りをかぎながら、うなずく女を見た男は相手へ聞いた。

「何の…ことです?ラヴィアンさん……」

瞳を輝かせるラヴィアンはラムザに答えた。

「あたしのウチってさ…製粉業を営んでいるんだよ。言ってなかったっけ?…ウチの会社が大手だってこと…あたし、士官学校へ入るまで知らなかったんだ。…工場(こうば)は大きかったよ。よく、姉ちゃんやステと隠れんぼして、遊んでたから」

ラヴィアンは笑顔で店の棚へ小麦粉を戻した。

「すて…???」ラムザが首を傾げた。

「『ステ』っていうのは、あたしの妹。ステファニーだから、『ステ』なの。それで、姉ちゃんの名前はドローネ。姉ちゃんはさ、あたしより6歳も年上なの。あたしが13歳の時に嫁いでいって……女の子が、二人生まれたんだよ。…元気かなぁ?」

ラヴィアンはにこにこしている。

「……。僕、全然知らないことばかりです…」困ったラムザが返答すると、ラヴィアンは棚に並べられている袋を指さした。

「この赤い花のマークが…『ローズ製粉』の小麦粉。あたしの父ちゃんと母ちゃんがやっている会社のね。そして……こっちの緑色の船のマークのやつは『リリマルレン製粉』の小麦粉。だいたい…ウチとリリマルレンの二社なんじゃないかな。イヴァリース内で出回っている小麦粉は。あとは個人がそれぞれの家で碾(ひ)いて、粉を作っているんだよ。…ここだけの話、リリマルレン社製の小麦粉は輸入されてくる小麦を主に使用していてね…あまり質が良くないっていうか……。ま…その分、価格は低めなんだけど。……長年の競合相手の社名さえ、あたしは知らなかったんだよねぇ。父ちゃんも母ちゃんも…あたしにそういうことは話してくれなくてさ……」

表情豊かな女の説明にどうしてか、嬉しくなってきたラムザは聞いてみた。

「えーと…『リリマルレン製粉』は…どこにあるんです?」

「フォボハム領。そこがリリマルレンの本拠地で、ルザリア領の半分とガリオンヌ領のほぼ全域は、リリマルレン製の小麦粉に支配されているんだ。ウチは…ルザリア領の残り半分と、ライオネル領と…ランベリー領、ゼルテニア領の方に力を入れているの。ランベリーはともかく…ゼルテニア側へのウチの商品の流通は滞(とどこお)っているみたい。……こんな話を父ちゃんから聞かされたのは、あたしが騎士団に入団する直前だからね。母ちゃんもそうなんだけどさ…あたしの親って…子供に大事なことを教えるのが下手なんだよ〜」

ラヴィアンは笑いつつ、ラムザの手をそっと取った。

「……お優しい、ご両親なんですね」彼女の家庭がうらやましく感じたラムザは棚からエーテルのビンをかごへ入れた。

カチャンカチャン、とガラスのビン同士がぶつかる音がする。

「えへへへへ…そうっかな〜」ほおを紅潮させたラヴィアンは照れ隠しに笑った。