ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

主人公の誕生日に

「どう…しま…しょう………」ラムザは両側を代わる代わる見た。

「…疲れたんです。二人とも…早起きして、いろいろと準備していましたから」彼に向かい合って座る女は微笑んだ。

ラムザの右腕にはアグリアスが寄りかかって眠っている。

また、ラムザの左腕にはラヴィアンがしがみついて寝ている。

二人の女に挟まれた男は困りながらも、喜んだ。

「……やさしい、ですね…。みんな…」

「……二人は、ラムザさんを…大切なのです。大好きなんです」アリシアは言ってから、テーブル上の器をつかんだ。

テーブルの上には何種類ものクッキーが大きな平皿に並べられており、その横には注ぎ口がある容器が置かれている。

「……はい。…あの、アリシアさんは…?」ラムザは茶を飲む女に聞いてみた。

「……すき、です…。わたしの気持ちは知っているでしょう?……わざわざ聞かないで…」アリシアは目を伏せた。

「うれしい…な…」ラムザは笑顔になった。

アリシアは目を伏せたまま、器を置いた。

本日は、ラムザの誕生日であった。

アグリアスとラヴィアンは彼に内緒で小麦粉をこねて、たくさんの焼き菓子を作り上げた。

王都から私用を済ませて戻ってきたアリシアは「おいしい」と昨今評判になっているハーブティーの茶葉を買いに行き、それぞれを楽しませた。

クッキーとハーブティー4人は誕生日を祝った。

女たちはすぐに酒を飲み始め、アリシア以外の二人はラムザにくっついて眠りだした。

どんな酒であれ、何杯飲んでも酔えないアリシアラムザと話していた。

「…ラヴィアンのご両親は製粉業を営んでいるの。それで…ラヴィアンはお菓子を上手に作れて、今回のこのクッキーも…アグリアスへ具体的な指示を与えたのは彼女なんです」アリシアは皿からクッキーを一枚つまんだ。

「…聞きました。ラヴィアンさんのお父さんとお母さんは工場(こうば)をやっている、と」ラムザは左にいる女を見つめた。

ラヴィアンはすーすー、と寝息をたてている。

ラムザは続けた。

「あと…ラヴィアンさんは三人姉妹の次女で、お姉さんと妹さんがいる…と、教えてくれました」

アリシアはふふふ、と笑ってから述べた。

「いろいろ話しているんだね。…おいしかったでしょ…粉を量ったのも、砂糖やなんかで味付けしたのも、すべてラヴィアンだから…。アグリアスは生地をこねていただけ」

ラムザは右にいる女を見つめた。

ラムザが見ていると、アグリアスは小さくつぶやいた。

「…ら、ラム…じゃ……。おいしくできて…よかった、である…ぞよ…。ラムじゃ……ょ…」

それを聞いたアリシアは言った。

「…今日のアグリアスは、可愛かった。『主殿(あるじどの)のため、美味な一品を作るのだッ』と…真剣にこねこねしていたもの…」

ラムザアグリアスの様子を思い浮かべ、相手が愛しくて愛しくてたまらなくなった。

すると、ラムザの左側から声がしてきた。

「…ラムジャ…さ、ん…。あた…し……。…たべ…て………」

「…???何を、言っているんでしょう?」ラムザはラヴィアンの方を向きつつ、アリシアへ問うた。

「……。…寝言、ですよ。いつも言っているの。気にしないで。………。……ラムザさん」アリシアの声がした。

「…はい?」ラムザが正面を向いた。

「……アグリアスのこと、よろしくお願いします。わたしも、ラヴィアンも…いつまでも、一緒にはいられないので。…たまにラムザさんを困らせることもあると思うけれど、まっすぐすぎるだけで…“真の悪人”ではないから。このわたしが言うのだから、間違いはない。どうか…アグリアスを…お願いします。彼女…ご両親に対して抱いていたわだかまりも無くなって、とても幸せなのね。そうなれたのも…ラムザさんと出会えたから、ですよ。……ラムザさん、いつまでもいつまでも彼女を頼みます」アリシアはここまで言うと、頭を下げた。

親が我が子を他人へ預ける時と同じようだった。

ラムザは突然のアリシアのセリフに何も考えられなくなり、「あ、あ…は、は、はい…。分かって…います……アリシア、さ…ん……」と返すや、頭を下げた。

年上の女はしどろもどろになる年下の男へ笑みを浮かべた。

ラムザは酒を飲んでもいないのに赤面してしまった。

一方、アリシアはいつもと何も変わらなかった。

……知的な女の内部にある湖は深く、その底は見えなかった。