ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

無知なるもの

「……以上です」そう言い、アリシアは書類を手渡した。

受け取った書類へ目を通したのはラムザである。

「………。いい、んでしょう……。毎度毎度…感謝しています、アリシアさん…」ラムザはイスに座ったまま、立っているアリシアへ頭を下げた。

「…仲間、厳密にいえば人間が増えぬ限り、このままでいって大丈夫でしょう。オルランドゥ様と別れた際、サポートアビリティには『密猟』をセットし…倒したモンスターは物理攻撃で息の根を止め、毛皮骨肉店まで送ってください…と、お願いしたのは英断となりました。わたし自身…ここまで、上手くいくとは…思っていませんでした。『ディープダンジョン』内に埋まっている希少なアイテム類は全て、回収済みです。……あとは、オルランドゥ様がダンジョン内で“狩り”をお楽しみになられるのなら…軍資金の問題は生じないはず、ですよ」アリシアは微笑を浮かべた。

「……ほんとうにアリシアさんはすごいです。ラッドさんが亡くなった後……会計役を押し付けてしまって…申しわけありません…。僕…『算術』も苦手で、何を使うべきか買うべきか、何が必要なのか、要らないのか…残しておくべきギルはどのくらいなのか、使用してしまってもよいギルはどの程度なのか…まるで分からなくて…。ショップで…品物を選ぶだけで…精一杯で……」ラムザはしょんぼりして白状した。

アリシアは首を横にふった。

「誰にでも、得意不得意はありますよ。城や町にあるショップ使用時のグラフィックがラムザさんだけしか用意されていないのが、そもそもの問題点です。…わたしも、それほど現金の取り扱いには慣れていません。…わたし達は企業の経営者ではないし、半永久的に『商売繁盛』を追い求めなければならない何らかの事業を行なっているわけでもありませんので…わたしでも、何とか務まっているんです。…わたし自身、あまり金欲が強くないのも幸いしたのかな。これといって…欲しいものが見つけられなくて…。特に物体としては……」

ラムザは彼女のセリフを深く考えずに返した。

「僕なら…無駄遣い、してしまいます。店に出かけては…あれも欲しい、これも欲しい、と。…大量にあるギルの使い道がよく分からないんです。アリシアさんしか…ギルの管理を任せられる人はいません」

笑顔のラムザアリシアも笑顔をつくった。

「ラヴィアンだったら…10日ほどで軍資金を使い果たすと思う。自分に正直だから…。ギルに関しては…アグリアスの方がまだ自重できるだろうね」

ラムザは彼女の発言に笑ってしまった。

彼を見たアリシアは続けた。

「…ラヴィアンと一緒にいると、楽しくて。わたしも…ラヴィアンみたいに…一生を過ごせたらな、と感じることがあるよ」アリシアはそう述べて、長イスへ腰かけた。

ラムザは再び、何も考えずに笑った。

「ふふふふ。…あ、そうだった。…ラムザさん、わたしの私用なのですが……ラムザさん達から離れて、一人で王都まで行ってきてもいいでしょうか?…わたしの親類の古い屋敷があって…そこには幼い頃、よく遊びに行ってたんです。屋敷に住んでいた親戚は亡くなってしまったのですけれど…その建物が今、どうなってるのかな…と、前から気になってて……」珍しいアリシアからのお願いにラムザは頷き、「なるほど……けど……一人で、大丈夫ですか?」と相手の美しい顔を見た。

「大丈夫。4人で行ったら、かえって危ないよ。ラムザさんはアグリアスやラヴィアンとここで待っていて。…チョコボへ乗って行けば、早く戻れると思う」

「…わかりました。ここから王都はすぐですからね」

ラムザアリシアは笑顔で会話を終えた。

1歳年上の女がなにを望んでいるのか、ラムザは最後の最後まで気付けなかったのである。

………そのことが、アリシアには嬉しく、そして苦しかった。