ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

ひかる結晶(07)

花火を見た後、さらにアリシアは続けた。

「このような言い方をしたら、語弊(ごへい)を招きかねないけれど…アグリアスはオヴェリア様と離れて、“正解”だった。王女様とではなく…ラムザさんと一緒に好きなだけ行動できる状況がうまれた時、元来の自分へと回帰できた。…プリンセス・カチュア姉さんの境涯をある程度引き継いでのキャラクター創造、つまりゲーム製作の最初期・シナリオ執筆の段階から…『薄幸(はっこう)で悲劇の王女様』という設定を背負わされていたにせよ…オヴェリア様にとっては酷なことであり、騎士団からの離脱及び任務の放棄が決定的となった際、アグリアスは皮肉にも“再誕”を果たせた。…“再誕”というのは少なくとも、一度は“死”というものを経験しなければならない。この“死”をアグリアスは、これまでの自己が壊され、壊れたのは『偽りの自己』であると認めた上でそれを土台として成長することにより、通過できたの。新たな自分自身、元来の自己を受容するにいたっては…オヴェリア様との離別、そして所属していた騎士団からの離反が必要不可欠だった。…国、特にグレバドス教会から逆徒(ぎゃくと)として追われる身になったにしても…アグリアスラムザさんとの別れを望んではいない。これは、何を示しているのか?…端的に言うなら、彼女は心地よい。新たに生まれ変わった自分が愛しい。…ラムザさんを愛することは、自分自身を愛することにつながる。…先述した『似た者同士』説を裏書きしているでしょう。自らの名誉を回復し、嫌疑を払拭するために…極端にいえば、『……ラムザという若者に脅迫されていた。私は仕方なく、王女様の御身(おんみ)を守るために…彼へ従っていたのだ。しかし、王女様が行方不明となってしまったゆえ…私は、ラムザという名の悪鬼(あっき)から逃れてきた。…私をお助けください、アジョラ様!!』とでも訴えて、どこかの教会へとび込んで聖職者の前で泣きわめいたにしても…彼女に『あっちへ行け!』と言う者は、まずいない。…騎士団へと教会の者が連絡をとれば、さらにアグリアスの身の安全は保障される。…わざわざ自分から出頭してきた『重要参考人』を即座に処刑したりはしない。教会側にしても、騎士団側にしても、彼女から聞き出したいことは山のようにあるよ。騎士団にはローラが単身、帰還しているはずだけど…ローラよりもさらに詳細な証言を引き出せるのは確実なアグリアスを、一刻も早く殺めようとする者は少ないはず。もちろん、アグリアスにいえることは、わたしら二人に対しても同じことがいえる。…まぁ、もっとも…新旧二種類のアグリアスが完全に統合されるには、まだまだ時間がかかるとみて間違い無い。アグリアスの“不統一な口調”からして、これは論を俟(ま)たない。……アグリアスは保身のため、いくらでもウソをつける。だけど、それをしない。ここに彼女のたくましさと気高さと神聖さを見つけられる。別な表現を借りるなら、これは…『アグリアスオークスの魅力』に他ならない」

アリシアが口を閉じると、ドーンッという音が鳴り、花火が夜空を彩った。

「………。…………き、気付かなかった。アリシア…ほんと〜に…よ〜く、観察してる…ね……」ラヴィアンは驚愕(きょうがく)し、相手へ畏怖(いふ)の念を抱いた。

「定められた役割を演じているだけだよ」そう言って、アリシアは微笑んだ。

………長い長い返答であったが、耳障りではなかった。

水の流れる音や風の吹く音と全く変わらずに、ラヴィアンの耳へ響いてきたのであった。