ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

剣と刀と(01)

倒れ込んだ女騎士は地面に両手をつき、頭を深々と下げた。

「ままま、参りました……」

茶色いマントをはおっている男は笑った。

「はっはっはっはっはっ…。アグリアス君もなかなかだよ。…見たまえ、この盾が傷だらけだ。斬撃の一つ一つにしっかりと信念が込められている。私よりもはるかに才覚がある」

立ち上がった女騎士はもじもじしながら、拾いあげた剣を腰の鞘におさめた。

「お…おやめくだされ…私など、まだまだです…」

「はっはっはっはっはっ…。私の技は荒削りさ。バルバネスのやつもそうだったが。おおっと…ラムザ君がいないので、口を滑らせてしまった」にこにこする男は威風堂々たる騎士剣を鞘へおさめた。

「…オルランドゥ様は、どのように剣技を修得なさったのですか?」アグリアス君、と呼ばれた女騎士は男に近寄った。

「独学で修めたものもあるし…バルバネスに教えてもらったものもある。ただ…やつから習った技は、私の戦い方には合わなくて。『剛剣』や『聖剣技』で…十分だったから、『魔法剣』とか『刀魂放気』は使わないまま…いつの間にか忘れてしまったなぁ」オルランドゥ様、と呼ばれた男は流れてきた汗をマントでぬぐいとった。

「…『魔法剣』、それに『刀魂放気』を…バルバネス殿は使用できたのですか。…初耳であります」アグリアスは考えながら返した。

「そうだよ。ラムザ君から聞かされてなかったのかい?…やつは剣技で敵を倒すよりは、敵兵一人一人を斬り伏せるのが上手で。…私は違うだろう?強力な剣技で相手をふっとばす。これが…“雷神シド”のやり方さ」オルランドゥは笑みを浮かべたままで片腕に固定されていた盾をはずした。

オルランドゥは続けた。

「バルバネスのやつは…人になにかを教えるのが、下手で下手で。…やつ自身、困ってたよ。やつの二人の息子へ剣技を修得させるために『剣技教師』を用意したぐらいだ」

「『剣技教師』……」アグリアスオルランドゥの発したセリフを繰り返した。

「うん。名は…たしか……セシリア…とか、いったかな。ある時期は『北天の黒騎士』と、呼ばれていたこともある女騎士さ。…終戦の前後に亡くなった、と聞かされたのには驚いた」盾を片手で持ったオルランドゥは歩き出した。

「『北天の黒騎士』…ですか…」アグリアスは再び、オルランドゥの言葉を繰り返した。

「ああ。…南天騎士団の中でも『北天の黒騎士』に対抗して…“南天の白騎士”をつくろう、という案が出ていた時もあった。適格者が見当たらなくて…実現には至らなかったのは残念だけど…」オルランドゥは言い、アグリアスは彼の後に続いて歩きはじめた。

地面から突き出している岩へ立てかけられた盾をアグリアスはつかんだ。

「……。私の…剣技の師のことなのですが…。師は…このような巨石を…素手で切断して、みせてくれました……」女騎士のセリフにオルランドゥは「えッ??」と声を上げた。

アグリアスは一本の指でざらざらした岩肌をなぞった。

「…直接、平手を…対象に触れずとも…石も木も鎧も盾も剣も…一刀両断、してしまわれました……。『極限刀』と…いう名称の技、だそうです…」黙るオルランドゥアグリアスは手刀の形にした手のひらを岩にさっと走らせた。

「…このように両手をして……どんなものも、切り落としてしまったのです。…切られた物の、その断面がこれまた…美しかったのであります。無理に引き裂いたり、砕いたようにはとても見えず……まるで…職人に磨かれたようになっておりました。何というといいのでしょう。…小刀で切り絵を作成するかのごとき…美麗で巧みな技術でして……」アグリアスは難しい顔で言った。