ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

遠い存在(02)

「…アグリアス君、ここにいたか。ラヴィアン君がおいしそうなパンを焼き上げて、スープを作ってくれたぞ。温かいうちに食べようじゃないか」女は振り返った。

「ああ…申しわけありませぬ。ラヴィアンのやつめ。オルランドゥ様を伝言役に使うなど…。後ほど、叱っておきますゆえ……」頭を下げる女へオルランドゥ様、と呼ばれた男は首を左右にふった。

「はっはっはっ…。気にすることはないよ、アグリアス君。ラヴィアン君は今…手を離せないらしい。ちょっとでも、調理場を離れたら料理が黒焦げになってしまうんだ。それに…私は隠遁(いんとん)している身だ。君たちもそんなにかしこまる必要はないさ」

オルランドゥは話しながら、庭に出てきた。

「ほんに申しわけありませぬ。ラヴィアンにはほんの僅かでも褒められると、その気になってしまう悪い癖があるのであります。私が『あなたは料理が上手』と、あいつへ言ったばかりに…」アグリアスが述べるや、オルランドゥは微笑んだ。

「いやいや、いいんだよ。……武術の稽古(けいこ)でも、していたのかい?」

「は、はッ。…師の真似事を少しばかり、やっておりました……」アグリアスは正直に言った。

「剣を持って…誰かと向きあって…剣術の訓練を行うのは、士官学校からなのかな?私は士官学校を出ていないんだよ。幼かった時分に武士(もののふ)だった父から『戦い方』をたたきこまれたんだ。南天騎士団に入団してからも、騎士と認められてからも…戦場だけが、それこそが私らの学び舎(や)だった。私らの世代は、そういうやつがごろごろしている。戦友は一人、また一人と…減っていく。教授役は…戦場での味方か、もしくは敵兵だけさ。…強い者、あとは運の良いやつが生き残っていく。領土、いや国を守りたいと…私らは協力しあって、ロマンダや隣国の兵士を倒していった。バルバネスのやつとも、そうして出会った。…お亡くなりになられた国王様から『エクスカリバー』を賜(たまわ)った時の感激は、決して忘れはしない。…どうして、だろう。君相手にこんな話をしてしまうとは。同じ…武人だからかな?はっはっはっはっはっはっ…」

オルランドゥは笑い声を上げたが、アグリアスは真面目な顔で返した。

「…大変うれしゅう存じます。百戦錬磨(ひゃくせんれんま)のオルランドゥ様から、そのようにおっしゃっていただけるとは。我が騎士道に誤りは一つもない、という証となるのです。真にありがたき、お言葉でありまする」

「はっはっはっはっ…。当時、アグリアス君みたいな騎士がいたら、今は亡き国王様もさぞ、お喜びになられたことだろう。そうだ…アグリアス君。私と手合わせをしてみないかね?」オルランドゥの提案にアグリアスは目をぱちくりさせた。

「わ…私ごときが…オルランドゥ様と、対戦など……」

「剣と盾を装備しての軽い訓練だよ。剣技は危ないから、剣術だけでやろう。…どうだい?」オルランドゥはあごのひげをなでた。

「は…はいッ!!ぜひにお願いいたしますッ!!」アグリアスは子供のような瞳になった。

「よし。それなら、ラヴィアン君の手料理を楽しんだ後で……この庭の向こう側にある林の近くでやるとしようか」オルランドゥは言い、アグリアスは「了解しました!」と返事をした。

にこやかな二人の武人は庭から屋敷の中へ入っていった。