ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

秋風(01)

「…アグリアスさーん。お風呂の準備が完了しましたよ」部屋へ入ってきた男は、窓の外をぼんやりと見ていた女に声をかけた。

「…そうであるの。けれど…今日のところは、入浴を控えようと思うのじゃ…」

振り向いた女が返すや、男は怪訝(けげん)な顔になった。

「入らないんですか?……どうしたんです?お風呂、好きなのに…。ほら、何日か前も…僕とお風呂で…あんなコトしてたじゃないですか…」

女は焦った。

「い、言わんでおくれ、ラムじゃ…。そそそ、そその通りで、ありまするけど…。あああ、あのね…ラムじゃ…。今日は…その……入らない方が良い日、なのね………」

「…………???」男はしばらく沈黙していたが、「あッ!…そ、そういう…日、なんですか…」と申し訳なさそうに言ってから、「じゃあ…僕だけで、入ってきます……」と歯切れが悪く続け、部屋をあとにした。

「ごめん、ラムじゃ……」女は一人でつぶやいた。

それから外が暗くなってきた。

女はカーテンを閉めた。

秋は日が暮れるのが早い。

外に立っている木々も枯れ葉ばかりが目立つ。

風は冷たく、空気も乾燥してきている。

『ベオルブ家』の別邸の庭は荒れ放題となっていた。

これは使用人を全員解雇したためであった。

ラムザとアルマの母親へ贈呈された邸宅は美しい庭園に囲まれており、小さな池にはよく水鳥も来ていた。

…今はもう、鳥たちはいない。

渡り鳥だったのだろう。

ラムザ達はガリオンヌ領にある『ベオルブ家』別邸の敷地内にいた。

門は開いたままで、館のドアの鍵もラムザが持っていたものがそのまま使えたのだ。

調べたところ、館内には誰もいなかった。

この館は『イグーロス城』の東側に位置していた。

『ベオルブ家』の関係者や北天騎士団の者たちから『ロゼ様の屋敷』と呼ばれた建物へラムザの二人の兄が立ち寄ることは、あまりなかった。

ラムザの兄二人は、ラムザとアルマの母親を内心、蔑(さげす)んでいたらしい。

特にザルバッグの方はそれが顕著で、自らの弟と妹は可愛がるが、その母親とは口をきかないどころか、目を合わせようともしなかった。

当初、ダイスダーグも、父親の再婚相手の性格には抵抗を感じていた。

……しかし、ダイスダーグは自身より2歳年上となる父親の再婚相手を“これは利用できる”と考えはじめ、彼女の味方となることにしたのであった。