ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

防波堤

「木の…根に引っかかって…転んだら…ラッドさんが、ラッドさんが…煙のように…消えて、それで……クリスタルになって…ま、間に合わなくて………」

暗い瞳をしたアリシアの報告に『戦いに勝った!』と喜んでいた三人は血相を変えて、走り出した。

アリシアが案内した現場にたどり着いた三人は大声を上げた。

ラヴィアンは回転するクリスタルの直前で膝をついて、号泣した。

その隣にはラムザが座り込んで、震えている。

そんなラムザをぎゅっと抱きしめているのはアグリアスである。

三人の後ろに立っているアリシアは唇をかんで、目を伏せていた。

くるくると回り続けるクリスタルを前にした四人は泣いたり、黙り込んだり、立ちすくんだり、呆然としたりと、何をどうするとよいのかの判断がつかないままであった。

「……アリシア、提案があるんだ。…オレの『秘密の仕事』を知っていながら、君はオレを許してくれているだろ?……オレと君は…似た者同士だ。オレは君と、もっと親密になりたくなってきた。で…アリシア、君はオレの彼女になってくれ。安心しろよ、分かってる、分かってる。……え、ラヴィアンのこと?ああ…彼女はオレにベタベタしてくるけどな。…似ているんだよ。以前、この仕事を請け負う前に付き合ってた女に雰囲気がさ。ラヴィアン、彼女が前の女に似ているから…オレは彼女と親しくしてやってるだけ。だから、ラヴィアン本人を特別、好きってワケじゃないよ。同じものばかり、食うと飽きちまうだろ。……オレは、君の方をたべてみたい。…どういう意味かって?…すぐに分かるさ。オレと付き合うと…ね。君をオレ好みの女へするために…いろいろと、仕込んでいきたいな。ラヴィアンのことなんか…まぁ、どうでもいいけど…。オレと君はラヴィアンには内緒でコッソリと付き合う…って、コトにするのがここは一番だろ。…よし、決まったな。オレと君は恋人同士になる。今すぐじゃなくていい。『儲け話』が全て、終わってからのコトさ。………けれども…どうして、君は『儲け話』の件もそうだが、次に戦うことになる場所や出てくる敵のことを知っているんだ?……君が大事にしている、三冊の本に何か書いてあるのか?……驚いただろ?君が『オレの仕事』を知ってしまったように…オレも君の『秘密』を知ってる。…オレは見てしまったんだよ。君が…いつも同じ本を読んでいるのを。君の『秘密』は…あの本にあるんだろ?………そうなんだな、アリシア。これで…オレの言いたいことが、分かったか?君はオレの提案を受け入れるしかないんだ。……こうしよう。オレは君に『女の悦び』を教えてやる。そうなったら、その本をオレにも見せてくれ。だいじょうぶだって。君がオレとの“今の提案”を受け入れてくれるんなら…ラヴィアンにも手を出さないし、ラムザ坊やにも、本のコトは話したりなんかしないさ。もちろん、これ以上…教会側に『ラムザ御一行の情報』を流すのもやめる。…けっこう報酬は良かったが…オレとしても、さすがにラムザ坊やを…気の毒になってきた。……信用しなって。オレは人情家で口が堅い。君と同じだ。そして、かわいい娘を放ってはおけないときた。…いつの間にかオレの方が君より、レベルが上になったろう。あ………ラヴィアンが戻ってきた。そんじゃ、この話はここまでにしとこう。頼んだよ、アリシア…」

アリシアは1ヶ月前に聞いた男の声を思い出していた。

クリスタルになった男の名前は、ラッド・キリング。

彼の死後、軍資金の管理はアリシアが引き継ぐこととなる。

仲間の初めての死はラムザ達へ影響を与えることになった。