ふるいものがたり

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本音でアグリアス(21)

チョコボの時計が時を刻んでいる。

「これが私の、こちらは師が私へ託したもの」部屋へ戻ってきたアグリアスは座る二人に手の内のものを見せた。

「……へぇ〜。…色が違うよ?」ラヴィアンはアグリアスの手から自らの手にそれを取った。

アグリアス「授与された年によって…各々の色は異なるらしい」

「…………へぇ…先生が……」ラヴィアンは手の内にある証を見つめている。

アリシア「……その時、他に先生は何か言っていたの?」

「……。言って、いいものなのかな…。…その、『要らなくなったら…捨ててしまいなさい…』と…お笑いになられておった……」言いにくそうにアグリアスは言葉をつないだ。

「す、捨てる…て…!?」ラヴィアンは驚嘆した。

アリシア「『竜探索』ならば、“それを捨てるなんてとんでもない!”って、ウィンドウに表示されるアイテムなのにね」

「……ご冗談だと、私は思っていたのじゃが…。……。今になって、考えてみると……」アグリアスは思い悩んでいるようである。

ラヴィアンから二つの証を手渡されたアリシアはそれを見つめ、つぶやいた。

「………先生って、誰よりも、雅(みや)びで、粋だな」

「…………ラヴィアン、アリシアアグリアスの真面目な声がした。

「ん?」ラヴィアンが応じ、アリシアも顔を上げた。

アグリアス「もしも…もしも、私が戦場で倒れることになったのなら…その証を、あなたたちが一つずつ、持ってくれないかしら」

「!!?隊長、どうしてそんなことを…」驚いたラヴィアンが返した。

「……」アリシアは黙って、アグリアスの言葉を待っている。

アグリアス「隊長って呼ばないで。これは……私からの命令ではないわ。…同期生としての“頼み”なの。……私はもう、騎士団へは戻れない。ラムじゃと生きると…決めたのだから………」

「………アグリアス」ぼそっとラヴィアンが言った。

アグリアス「…ラムじゃが『地獄へ行く』と言ったのならば、共に行こうと思う。……どのような時も主殿のそばにいて、全てを分かち合いたいのじゃ」

「……」アリシアアグリアスの表情を見ている。

「……武人だ、騎士だ、『ホーリーナイト』だと、私は虚勢を張ってきたが、ラムじゃと出会って……変わってしまった。自らでも驚くしかないほどに…私は、“ただの女性(にょしょう)”なのね。ラムじゃに優しくされるたびに、そう、凍った氷が溶けていくかのように…胸が温かくなって…もっと、もっと、この感覚に浸っていたい…と……」アグリアスは敗北した顔をしている。

「……」ラヴィアンはアグリアスの表情を見ている。

「結ばれた後も、その前も、この胸の高まり自体は変わらない。…ラムじゃを喜ばせてあげたいの。ラムじゃを失いたくはないのじゃ。…ラムじゃに愛してほしい。無論、私もラムじゃを愛したい。私は主殿が望むこと、願うことは何であっても、かなえてあげたいと思うとる。…例え、それが世間一般の法や掟をねじ曲げるとなったにしても、かまわない。……これで、分かったでしょう。私はもう…王家や国だけに忠勤をつくしている騎士ではないの………」アグリアスの表情は艶(なま)めかしい。

「「……」」ラヴィアンとアリシアは黙っている。

「……私を軽蔑してくれても、いいわ。……。…師は、隻眼(せきがん)によって…全てをお見通しになられておられたのであろうか…。だから…だから…あのような、お言葉を私へと……」完全に女の顔となったアグリアスは独り言をつぶやいた。