ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

恩師(09)

先生「……。『静める水』。

わたしが夫から教えてもらったことなのですが、昔、ある学者がこんな実験をしたそうです。

二つの同じ器に同じ所から汲(く)んできた水を同量入れます。

そして片方の水には『大好き、愛してるよ』と声をかけ、もう片方の水には『大嫌い、死んでしまえ』と罵声(ばせい)を浴びせました。

しばらくそれを続けた後、各々の器へ同じ花を一本ずつさしたところ、どうなったか。

好意の言葉を与えられた水にさされている花は長らく生き続けました。

しかし、拒絶の言葉を与えられた水にさされた花はすぐに枯れてしまったのです。

このことから、水にも“感情”というものが備わっていることが読み取れます。

湖や泉を見ているとその表面にはそれほど変化は認められませんが、水中では確実に動きが存在し、水は水の運動をしています。

静まり返っており、透き通って物言わぬ水にも、激しい情感と働きが含まれている。

そもそも、“静か”というのは何の反応も示さない、ということではありません。

自らの想いを自らの内に抱え、蓄え、秘めている状態を“静か”と表現するのです。

…あなたなら、ともすれば情に押し流され、恐ろしい行いをしてしまう周りの人々を抑えることができるでしょう。

情に引っ張り回されて、人間はとてもひどいことをし続けてきました。

それはわたしだって、例外ではありません。

……わたし、分かっていたから。

あなたは、とても良い子です。

汚(けが)れていない水・清い水と、全く同じ心の持ち主だもの。

たくさん、周囲へ甘えなさい。

みんな、あなたが大好きですよ」

「…ありがとうございます」アリシアは伏せ目で応じた。

先生「三人のこと、お願いね。あなたなら、どんな人であっても預けられる。自らを知らぬ者は、世界を知らない。自らを知る者は、世界を知っています。…頼みましたよ」

「……はい」静かに答えてからアリシアは席へ戻った。

「……どうだった?“先生っぽかった”かなぁ?」先生は木製の箱を閉じた。

「…ッハッ…はぃッ…」アグリアスは目をふいている。

「ウッ…あッ…ウゥ…」ラヴィアンは泣いている。

「…ッ…ッ」ローラはうんうん、とうなずいている。

「…他のどの教官より、“先生らしかった”ですよ」アリシアが一人で答えた。

「そう?じゃあ、成功だね〜。…あなた達へ渡した結晶は、四つで一組になっているんだ。何かが増えることも、何かが減ることもない」先生は小さな箱を教卓の上に置いた。

「………」四人はそれぞれに手の中の結晶を見つめた。