「……士官学校の時も、計算は不得意だったものね」女は言った。
「それ、それ、それ。…『砦の最上階から発射した弓矢の有効射程距離』なんて…算出できるかってーの。あっはっははははははははっ…。ものすごい逆風の中、弓矢を発射したらどうするんですかね?戦いの時、天候は選べないじゃありませんか?あっはっはははははっ…。お客さん…話がわっかるわ〜」日光が射し込んでいる部屋で女性は相手を見た。
「…久しぶり。教官になっていたなんて。…出世したんだ、ローラ」女が言った。
「!!!!…ひ、ひぃあああああああああああ〜あああああ〜〜ッ!!!!?…どどどどど、ど〜いうコト、どういう、コト!!!??ア、ア…アアア、アリ、アリ、アリシ、ァリシア…。アリシア、アリシア、アリシア〜ッ!????えッ!??え、えぇッ!?なに、なんで…!?変わってない…!?よ?えッ!?どーして?若くて…可愛くて…キレイ…。え、ええ、えぇーーーッ!?……?????」ガタン、とイスを倒して立ち上がった女性は、ただただ驚該(きょうがい)している。
アリシア、と呼ばれた女は鳥の子色の髪に赤い髪留めを付けていて、上半身にぴったりとした樹脂製の服を着ていた。
さらに腰の左右には各々異なる忍者刀を差している女へと巻き毛の髪の女性は抱きついた。
「あ、ああ〜、あ〜、本物だ。本物のアリシアだ〜〜ッ!!!すごい、すごい、すごいよ、コレ!!ど〜して、ど〜して、なの!?あー、アリシア〜ッ!!!アレ、コレ…懐かしい!!」女性はぴょんぴょん飛び跳ねつつ、女の左腕にはまっている腕輪を触った。
「…ああ〜。アリシア…アリシア…アリシア〜。また、会えるだなんてッ!!でも、ど〜して?ど〜して…?今になって…?それにしても…顔の肌、しっとりつやつや…。アタシが子供産む前より…イイよ〜。ね〜、何?何がどうなっているの?アリシア…教えて、教えてよ…ね〜ね〜」ローラ、と呼ばれた女性はぎゅっと、アリシアを抱きしめている。
……そう、だった。
わたしの…名前は……アリシア、というんだった…。
そして…姓は……ハーディーだったな…。
アリシア・ハーディー………。
これが…わたしの…わたしの……。
表情をゆるめた女はくっついている年上女性へ言った。
「……うん。あれから…どうなったのか、教えるよ。長い話になると思うけど…時間は大丈夫?」と。
「ぜんぜん大丈夫〜ッ!!!今日の課業時間はもう終わってるもん!!家計簿なんて、もーどうでもいいやぁ!!夫だって、今日は戻らないしさ。あっはっはははははっ……」ローラは泣いて笑った。
「ふふふふふふ…。さて…どこから始めると良いかな?……ローラが…腕にケガをしてから…で、いいよね?」アリシアはにっこりした。