好きじゃラムじゃ
ん…………。 ……向こうで……ラヴィアンが何か、叫んでいる。 なんて言ってるのかしら? …ごめんね、ラヴィアン。 もう、聞こえない。 …聞きたくもない。 毒にも薬にもならない友情ごっこはここで終わり、だから。 本音を言うとね…いつであっても、あなたと一組に…
………うれしい……。 無は無にかえる……これが本来あるべき姿……。 これこそ……わたしが望んでいたこと……。 …………。 ふふふ。 ……よかったね、アグリアス。 都合よく、ラムザさんがそばにいてくれて…。 ふふふふふふふ……ウソ、ウソ。 少しもそうは思っていないよ。 ………
『あ…ああ…。ルカヴィの主(あるじ)にしては…ずいぶんともろかったな。……私は、ここまでか。が…しかし、良かった。これで良かったのだ。…オヴェリア様も、もう大丈夫。我が主殿(あるじどの)とアルマ様も無事再会できた。…父上、母上…私は…騎士としての…本…
赤色のきわどい衣装で身を包んでいた『聖天使アルテマ』は、その姿を変えた。 金属製甲冑(きんぞくせいかっちゅう)のような全身と暗黒の翼を持った『聖大天使アルテマ』は再び、わたしたちへと襲いかかってくる。 姿形は多少、大型化したものの…それほど強…
「…ううん。…アルマ様を奪回しなければ、いつまでたっても、ラムザさんは安心できないよ。明日、オーボンヌ修道院へ出発する予定だから…早く、休もう」アリシアはもっともなことをラヴィアンへ伝えた。 二人のいる隣の部屋にはラムザとアグリアスが眠ってい…
ラヴィアンは「う、うっそおおぉぉッ!!」と声を出して起き上がり、「あ、あ、あの…あの、アクアちゃんがぁ!?」と同じベッドに寝ている女へ聞いた。 「…らしいよ。夜は静かに。アクアちゃんが言うには…『任務が終わって帰ってきたら、正式に教えてあげる…
明かりが消えた部屋で女の声は言った。 「ね…アリシア」 「なに?」別の女の声は返した。 ラヴィアン「そっちのベッドに入っても、いい?」 アリシア「え……いいけれど。寒いの?」 布のめくる音が聞こえ、離れているベッドからラヴィアンはアリシアの寝てい…
「何度、この町に来たんだろう…」窓から夜の町を眺めながら、ラヴィアンが言った。 「んー……。町を通過して、東や西や北へ向かっていった時のことも含めるなら…80回以上…来ていると思う」洗面所から歩いてきたアリシアは答えた。 「……。よーく、よーく…思い…
しばらくしてから、アグリアスが口を開いた。 「………こんなことがあったぞよ。…騎士団へ入って、半年ほど経過したある日のこと。私が城の通路を歩いていると…アリシアが本らしきものを開いて、中庭を見ていた。時間は、“自由時間”だった。彼女は………。冷たい瞳…
「……わ、分かっているわ。ありがとうね。…どうしたのじゃ?今日の…あなたはいつもとは…異っておる…ぞよ……」 アグリアスは照れている。 ラヴィアン「ごめん、アグリアス……。……アリシアの言葉を信じるならば…もう、それほどの時間は残されていない、ということ…
突然、ラヴィアンが聞いた。 「…結婚して、何年目になるんですか?」と。 「ぇっ……。ささ、3…年…目…かな…。そそそ、それが…ど、どうしたの…?」 唐突な質問にアグリアスはびくびくしている。 ラヴィアンは再度、質問してきた。 「今……何歳ですか?」と。 ア…
「………。わたしらの知るラムザさんは違うよね。今、わたしが言ったようにはアグリアスへしなかった。目をギラギラさせて、アグリアスに襲いかかっていったりはしない。…ラヴィアン、わたしにだってそう。……もう分かったでしょう?不幸が幸福を作り出す土台と…
アリシアはさらに続けた。 「…ムスタディオさんが機工都市ゴーグに行き、そして爆発事故が発生した。ムスタディオさんを捜すどころの状況ではない程のすさまじい被害を目の当たりにしたわたし達は、ゴーグから後退するより他なかった。…ゴーグまで駆けつけた…
「珍しいこともあるのぅ…。なぜに、ラヴィアンはラムじゃへついて行ったのじゃ?天候も悪い、というのに…。彼女の性格ならば、こんな日はわざわざ出かけんじゃろう」アグリアスの問いにアリシアが答えた。 「それは…ラヴィアンがラムザさんへ気があるため、…
…胸のドキドキを感じる。 ……ラムジャさん…そんなふうに言わないで…よぉ…。 …あたし…も…女の子、なんだからぁ……。 ラヴィアンは胸の高鳴りをラムザへ悟られぬよう、「あんがと…ラムジャさん…」とだけ返し、歩いた。 すると、ラヴィアンは雪と泥の混じりあった…
前にいる見習い戦士は壁へ寄りかかって眠っている。 横にいる見習い戦士はぴらぴらした薄い紙をつまらなそうに見つめている。 『戦士斡旋所』の長イスにラヴィアンは腰かけていた。 彼女は計4つの革製バッグを周囲に置いて、ラムザが戻ってくるのを待ってい…
………わたしはこの造られた世界の真実を知っている。 わたしは知ってしまった。 わたしの他にこれを知る者は一人もいない。 だから、わたしは正しく、わたしの自由意志は聖なるものなのだ………。 士官学校へ入学する前と在学中はそうでもなかったが騎士団へ入団…
部屋へ入ってきたラムザは落ち着こうと深呼吸しながら、ベッドに腰かけた。 すると隣のベッドで横になっていた女は布をめくり、彼へくっついてきた。 ラムザ「ん?…お、起きてたんですか?…うわ!?…アリシアさんの言っていた通り、かなり…酔っていますね………
酒のために上気しているものの、ラヴィアンだって可愛らしい女性ではないか。 アグリアスとアリシアの美しさは無論認めるが、ラヴィアンはラヴィアンで美しい。 …彼女には彼女の魅力や色っぽさがあるのだ。 無防備すぎる彼女の姿はラムザの本能を刺激した。 …
「どうしたんです?」ラムザが問うと、アリシアは答えた。 「あ…おかえりなさい。遅かったですね。…ラヴィアンとわたしとアグリアスで…飲んでいたんです。『ラムザさんが戻るまでの時間、飲もう』ということで。そうしたら…二人共、飲み過ぎて……酔いつぶれて…
「…よし、今回は…これでいいかな。…!あ、そうだ…」 自分の手を見たラムザは机越しに立っている店長へ聞いた。 「あの…『天使の指輪』って、置いていますか?」 「『天使の指輪』かい?あぁ、あります…」店長はうなずいた。 「この…僕がはめているのと同じ物…
「…………」 ラヴィアンは生まれて初めて父親以外の男性に抱きしめられた。 彼女は少しもそれを嫌とは感じなかった。 ラヴィアンは大切なラムザのためなら、すぐにでも自らの身を投げ出す覚悟ができていたし、このラムザになら自分のすべてを捧げたい、とも感じ…
「………ラ、ラムジャさん…そんなに……あたしらに…気を遣わなくていいよ…。あたしら…ラムジャさんを責めるつもりなんて、ないもの…」 立ち止まった女に男は振り向いた。 「え?……」ラムザの声をさえぎって、ラヴィアンは突然と大声を出した。 「あ、あたしらのこ…
店をあとにして歩く男女を夕日が照らしている。 「…それでね、父ちゃんが夢をみた日から、1ヶ月ちょっと後に…あたしは士官学校へ入学したの。…中央校だよ。父ちゃんが夢をみなければ…学校には行けなかったんだって。入学する月も、入学できる年齢も決まって…
「あ!!…これ……ウチの小麦粉だ!」 店内で使う専用のかごを手に下げていたラムザはラヴィアンが声を上げたため、振り返った。 「……うちのこむぎこ??」ラムザが返す。 「そう、そう。……ほら、紙袋に赤い花のマークがあるでしょ?……あーー、この袋のにおい…
「……わかっていたよ、ラムザさん。わたしもまったく同じ気持ち。愛しているよ。…わたしは興味をもってくれただけでも、幸せ。本来、存在しない、わたしへ。ラムザさんは……自分がお父上と同じようになってしまうかもしれない、と恐れているのでしょう?…大丈…
「いいの、いいんだよ。…わたし、うれしい。……男性は、そうなってしまうものなのでしょう。…女性も、そう。好きな男性から求められるとうれしいの。ただ……女はひねくれているから…素直に喜ばないだけ。ひねくれているのが正しい、と思い込んでいるから。…………
「………ありがとうございます…ですね、ラムザさん…。わたし…くらくらして…息が苦しくなった…というか、肩が重くなって…頭も重くて、つらくなってきて…それで、倒れた…みたいです……。………貧血かな。かなり、久しぶりになったな……」ラムザにはアリシアが独り言を…
!!!!! 「ア、アリシアさんッ!!!」呼びかけたが、女は「………ぅ…んん……」としか声を出せなかった。 ラムザはもう一度、叫んだ。 「アリシアさん!!し、しっかりして…くださいッ!!」 ごろんと濡れた床に寝たままのアリシアを抱き上げたラムザは、彼女…
…………。 ドキドキしていたラムザへ大きな音が聞こえてきたのは、その時だった。 音は浴室内から響き、ラムザは全身を殴られたみたいになり、心臓が止まりそうになった。 ドン、ガン、ゴゴン、ダン……。 恐ろしい音がしてから、しばらくラムザは座ったままで凍…