ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

水中花(01)

門には飾り文字で『ニューンベルク城』とある。

しかし、『ニューンベルク城』はほぼ崩れてしまっており、残骸状態でその姿をさらしていた。

…城の西にあった塔が倒れている。

塔は城の中心部に向かって崩れ落ちており、特に城の西側は原形をとどめてはいなかった。

城の東側に建っていた教官用住居は全壊していて、一軒も残ってはいない。

『ニューンベルク城』には、東西南北の四箇所に門があった。

女は南門から入っていった。

『正面出入口』と団員たちと教官たちが呼んでいた、南門から続く城本体への出入口は無事だ。

扉は閉じられているが、門を警備している兵士の姿はない。

女は敷地内を見てあるき、考えた。

竜巻の一撃によって……これほどまでに、城が崩落するものだろうか?

岩場や演習場にはまだ行ってはいないけれど、城はぼろぼろになっている。

城とは別に造られていた教官用の建物もばらばらに砕かれている。

……北門の方は、どうなっているのだろう?

…北門へ行ってみよう。

城の東門の前にいた女は、かつて木製の小屋が建てられていた場所から歩いた。

進む女の耳へ「おい、こら!止まれ!」と、男の声が聞こえたのはその時である。

たたずむ女まで帯剣している男が2名、走ってきた。

二人とも同じ制服を着用している。

女は二人の男を交互に見た。

一人の男は女の顔をしっかりと見たとたん、凍り付いた。

もう一人の男は手を剣の柄(つか)へかけつつ、言った。

「…ここは国の管理施設だぞ。おい、女。無断で立ち入ってはならぬ。どういうつもりか?」妙に感じの悪い男はあごひげを生やしている。

「あ、あ…ごめんなさい。この城は、騎士団…ル…『ルザリア聖近衛騎士団』が使用していたと、思うのですが……」女は謝罪してから相手へ問うた。

「『ルザリア聖近衛騎士団』、だと!?…騎士団は襲撃を受けてから、東にある『ヘルベルト城』へ移ったろう。……ゲオルク・マインドルがひき起こしたあれを知らんのか?」あごひげの男は女を怪しみつつ、返した。

「………そう…だったのですか。許可を得ずに侵入してしまって、本当にごめんなさい。『ヘルベルト城』まで、行ってみます。大変申しわけありませんでした…」女は深々と頭を下げてから、踵(きびす)を返して東門へ歩き出した。

「…うむ。分かればよろしい。……?…先輩?どうしたんです?」あごひげの男は横で棒立ちになっている、もう一人の男へ声をかけた。

「………む、むかし…昔…ふられた……女性に…そっくりで…それで…」まばたきもできない男は何とか声を出した。

「??…何、言ってるんですか?まぁ…可愛い女ですけど…。いい女だってのは、認めますよ。さぁ…戻りましょう。アンディ先輩」あごひげの男はくるりと振り返り、北門の方向へ歩いていった。

アンディ先輩、と呼ばれた男は去ってゆく女の姿が見えなくなるまで、その場を動けなかった。

「……まさか、な…。何年経っているんだよ…まったく……」男は頭(かぶり)を振り、戻っていった。

許されぬ変化(03)

両手に一本ずつ、直刀を握りしめた女は異様な目付きをしている。

その女に出会った者たちは誰もが怯えた。

王都の西側から中央部まで急いだ女は脚がもつれて転倒してしまった。

女は「どうしてこんなに足が疲れているのかしら?」と考えて、目前に転がった二振りの忍者刀を左右の腰の鞘へと収めた。

女は片脚を軸にして立つや、片方の脚をひきずっていることに気付いた。

…こういう場合は…白魔法。

「清らかなる生命の風よ、失いし力とならん! ケアル!」

女は詠唱し、自身の肉体の治癒を行った。

うん…痛くない。

これで…また…歩ける。

ふふふふふ。

口元に笑みを浮かべた女の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)を遠巻きに見守っていた人々は顔を見合わせた。

…ただの狂人、というわけではない。

あれは……危険人物、なのだ。

今…魔法を自分に使った、ということは…離れていても…攻撃が可能、ということだ。

……逃げよう。

あの人に関わっては、いけない。

女を見つめていた者たちは恐怖に駆られて走り去っていった。

女は先ほどよりも速度を落として、宮殿を目指した。

色あせて、外壁にひびがいくつも入っている宮殿はどんどん近くなってくる。

……王は国なり。

だから…壊れてしまった国の主には、死がふさわしい。

王だけではない。

その妃も、死ぬがいい。

神聖なるわたしが、愚かな王族へ正義の裁きを与えなければ。

栄光ある、死を与えてやらなければ。

わたしの他に誰がやるというのか。

ほかの何よりも優れた知識を有するわたしには、その権利があるッ。

ふふふふふふ。

……わたしと同じようにしてあげる。

ふふふふふ。

…わたしと同じようにしてあげる。

ふふふ。

みんな、わたしみたいに壊してあげる。

ふふ。

みんな、同じに…。

自らを保つために他のものを傷つけ、他から何かを奪い取っては破壊し、一時的な快楽を求める、というのが人の本性・本質なんだもの。

誰が「それは違う」なんて、言えるのかしら?

あなたが食べているものやギルは、どうやって入手したの?

ふふふ。

そういう仕組みなんだから、仕方ない…と、それらしい言い訳をして、常時逃げているだけなのに、人ってその内側で作られた思い込みだけはひたすらに立派よね。

ふふふふ。

わたしは、わたしを保つために、あれを壊したいの。

ふふふふふふふふふふふふふふふ。

恍惚(こうこつ)の境地へいたっていた女は、見覚えのある華麗な造りの門が見えてきたため、冷水を浴びせられたかのような表情になった。

女は…その門を覚えていた。

厳密に述べるならば、女はこの門により囲まれた城へ出入りしていた。

女は居ても立っても居られなくなり、門の方向に足を向けた。

疎遠となっていた子が親のいる所へ戻っていくようであった。

ただし…女が記憶している城はすでに門の内側に存在してはいなかった。

許されぬ変化(02)

女は橋を渡ってから、公園まで来た。

公園内でも、火山灰や軽石が一箇所へ集められている。

女は公園に入ってから空を見上げた。

どうすればいいのか、すべてが分からない。

ふふ…ふふふふふふふ…。

どうして…笑っているのか…。

何も楽しくなんか、ないのに。

ふふ…ふふ…ふふふ。

自分らしくないではないか。

このような時にこそ、冷静沈着であるべきだろう。

…自分らしく?

なに?

それ?

…与えられた性格を「自分の性格」として、自分を演じていただけだ。

自分らしさなんて、元々どこにもない。

わたしには拒否することもできなかった。

わたしなんて、どこにもいないの。

どこにもいないのだから、何だってできる。

…偉そうに。

あなたは…そう言う、あなたはいったい誰なの!?

「…………」

………あ、あぁ。

ア、ア、ア〜ッ!!!

憤った女は樹木を忍者刀で切り倒した。

弱々しい木立は倒れ、隣の木にもたれかかった。

…あ、ハ、ハハ、ハ、フー。

フー。

フー。

フー。

ふふふふふふ。

力こそ、全て!!

木の分際で、わたしへ逆らうんじゃない!

ばかね〜〜〜。

全部…切ってしまおうかな?

連帯責任よ〜。

愚かな同類の負担は、同類でしなさいよ〜〜。

黒魔法で燃やしてやるのも、いいかもしれない。

……人が、モンスターが、木が、草が、花が、何だというのか?

直刀を握る女は首(こうべ)を回(めぐ)らせた。

すると、宮殿が女の目に留まった。

ああっ、ぁあの…宮殿…。

……破壊して、しまいたい。

わたしはすべてを失ったのに…あれが残っているのは許せない。

女はもう一本の忍者刀を腰から抜くや、宮殿めがけて一直線に進み始めた。

公園から出た女は足早に宮殿へ向かった。