ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 ここは『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があるサイトです。

まとわりつく記憶

「…よし、今回は…これでいいかな。…!あ、そうだ…」

自分の手を見たラムザは机越しに立っている店長へ聞いた。

「あの…『天使の指輪』って、置いていますか?」

「『天使の指輪』かい?あぁ、あります…」店長はうなずいた。

「この…僕がはめているのと同じ物、ですか?」

ラムザは店の机の上に自らの左手を載せ、右手で指輪を指した。

「…んーん。…『アッズム』だね。…ある、あります。……ほら……これ…でしょう、お客さん……」店長は背後にあった戸棚から小さな箱を取り出し、美しい蓋を開けて箱の中をラムザへ見せた。

「……同じ、ですね。…なら、コレも一つ加えて…今日の買い物は終わりにします」

「はい。ありがとうございます。んじゃ…合計して…」店長は店の手伝いをしている娘へ言った。

娘「はーい」

ラムザが店内を見ていると、店長が話し出した。

「…お客さん、『天使の指輪』もそうですけど、アクセサリーの類は早めに買っておいた方が…いいみたいですよ。…前にゴーグで、でっかい爆発事故があったでしょう。その時に…あの有名なアクセサリー職人のアッズムさんが、その奥さんと二人して亡くなったらしいです。それで…アッズムさんの作ってたアクセサリーはもうこれ以上、作ることができないって…。何でも、アッズムさんの工房は丸ごと吹き飛ばされて……。アクセサリーを製造するための型枠自体が無くなってしまった、とかでして…。ウチら、商売やってる者は…“『アッズム』シリーズは高価になっていく”んじゃないかって…予想しています。だから…お客さんみたいに、今のうちに買っとくのは賢いですよ」

「…………」

暗い顔になってしまったラムザへ娘は明るい声をかけた。

娘「……計算終わりました〜。合計で、ピッタリ60000ギルになりま〜す」

ラムザはギルの入っている革袋をふところから出した。

彼が付けている指輪は店の照明に反射していた。

製粉業者の娘(04)

「…………」

ラヴィアンは生まれて初めて父親以外の男性に抱きしめられた。

彼女は少しもそれを嫌とは感じなかった。

ラヴィアンは大切なラムザのためなら、すぐにでも自らの身を投げ出す覚悟ができていたし、このラムザになら自分のすべてを捧げたい、とも感じていたのであった。

ラムザラムザで、これまで彼女へ感じていた想いが一気に高まってしまった。

しかし……ラムザにはアグリアスという女性が先にいたため、「ラヴィアンさんを好きになってはいけない、アグリアスさんが泣いてしまう…」と、彼は感じた。

そして…単純に女を守りたい、とも、男であるラムザは感じたのである。

ラムザはこの時…ラヴィアンもアリシアも大切に扱ってあげなければならない、と覚悟を定めた。

“三人姉妹”といってもよさそうな女たちは皆、ラムザを愛している。

……どれほどに僕は彼女たちに救ってもらっていることであろう。

戦場だけに限った話ではない。

…僕はギルをがっちりと抱え、僅かに『戦闘の心得』があるのみで、その他には何もできないし、分からないままにイヴァリース内を転戦している。

……言い換えるならば、僕はギルには困っていないゴロツキのようなものではないのか。

国内を荒らしまわる盗賊の一人と、それほど大差がない僕の側(そば)にいてくれるみんなは……僕とは比較できないほど、はるかに優れた人ばかりで…いつ、僕は見捨てられても……文句の一つも言えやしない。

…協力して一緒に戦ってくれている、ということは……僕を信じてくれているということなのだ。

仲間たちのその心に、僕は応えなければいけない。

……ラムザは彼を擁護し、涙まで流してくれるラヴィアンを自らの目で見て、ついにそれを理解するにいたった。

「……ラ、ラムジャさん…さ、さっきの……は…さ…ええと…泣いちゃって……あたし……」

「…いえ、いいんです。帰りましょう」

「………」

「………。素直に泣いたり、笑ったりできるあなたが、好きです」

「…!…!…!…!」

ラヴィアンは気まずそうだったが、ラムザは力強く彼女へ返答した。

二人の間には重い麻袋があり、一つの袋を二人で分担して運びながら男女は宿まで歩いていた。

空を飛んでいた鳥はねぐらに帰ったのか、もう姿が見えない。

夕日は完全に沈んでしまった。

しかし、ラムザの心の底には熱いものが赤々と燃えていた。

その熱量は脆弱(ぜいじゃく)な彼の心を支えるには十分すぎるほど、熱かった。

製粉業者の娘(03)

「………ラ、ラムジャさん…そんなに……あたしらに…気を遣わなくていいよ…。あたしら…ラムジャさんを責めるつもりなんて、ないもの…」

立ち止まった女に男は振り向いた。

「え?……」ラムザの声をさえぎって、ラヴィアンは突然と大声を出した。

「あ、あたしらのことで困ることなんてないよッ。ラムジャさんが…思った通りにやればいいんだってッ。アリシアだって、アグリアスだって…同じように、考えているよッ。だから…だからぁッ!!」

様々な想いが入り混じって感情的になり、大粒の涙をこぼしてしまった女の顔は夕日色に染まっている。

そんな彼女が可愛らしく思えたラムザは、「………。……ありがとう、ございます」とだけ言い、ラヴィアンをそのまま抱きしめた。

「!??あ…あっ…ラム、ジャっ…さん?んん…っ…っ…!!」

ラムザが持っていた麻製の袋はラヴィアンの背中側にくっついている。

………男女は抱きしめあった。

人と同様に町で暮らしている鳥の鳴き声が高所から響いた。

これは二人のよく知る鳥の声であった。

そして、二人の周囲に他者はいなかった。

ラムザは言った。

「僕が……あなたを守ります」

「………。ラ、ラムジャさん……逆だよぉ…まま…守るの……あたしの方だよぉ…」ラヴィアンのくぐもった声がした。

「…はい?」ラムザが言うや、ラヴィアンはくぐもった声のまま続けた。

「……アグリアスと…アリシア……と、あと…あたしで…決めたの……『三人で協力してラムジャさんを守る』って…。あたしらは騎士だもん…。それで…アグリアスだけじゃ…アグリアス一人じゃ…手が回らない部分があって…ラムジャさんを守れないかもしれない…って、アリシアが言って…それで、それはそうだよね…って、あたしもアグリアスも…思って…アリシアと…あたしで……アグリアスの…負担を…少しでも…軽くしてあげよってなって……だからぁ、だからぁ……」

「…………そう……だったんですか…」ラムザは三人の女たちの自らへ対する想いをここで知った。

アグリアスだけではなく、ラヴィアンもアリシアラムザのことを愛しているのである。