ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

手紙

老人は、チョコボに水をあげていた。

チョコボは数十羽もいる。

柵の外へ老人は何の気なしに目をやった。

老人「…おんや、まあ…」

桶を手に持ったまま、目をやった方向に老人は進んで行った。

柵の出入口まで、一羽のチョコボが歩いてきた。

そのチョコボの前に着いた老人はチョコボの頭をなでた。

老人「おめえは、プックルじゃねぇか。戻ってきたんか?」

チョコボ「ク〜」

老人「『旅人さん』は、どしたぁ?どこかに落っことしてきたのかぁ?」

チョコボ「クェ、クェ〜」

チョコボは自分の背中に載せてある鞍(くら)をクチバシでさした。

老人「ん?…これか?」

老人はチョコボの鞍から布製のバッグを取り外した。

そして、その中から老人は一枚の紙を見つけた。

…………。

老人は目で文字を読んでいる。

チョコボ「…クェ?」

老人「そーか、そーか、良かったぁ。プックル、あの人はもう、大丈夫だぁ」

チョコボ「クェ〜〜」

老人「…何か食うかぁ?…コッチさ、来いや」

老人はチョコボを連れて、柵の中へ歩いて行った。

 

((手紙))

トンヌラさんとプックルのおかげで、さがしていた人に出会えました。

いろいろと本当にありがとうございました。

〜旅人のラヴィアンより

居場所(02)

先生はラヴィアンの頭をなでながら、続けた。

「……この建物はね、元々は船…軍で使う輸送船を造るための部品を保管しておくのに使用されていたんだって。町の西側に大きな港があって…『エリオ港』という名称なんだけど…。『エリオ港』はロマンダ内でも、かなり設備の整った港らしいよ。軍港としても、商港としても、重要な拠点なの。それで…港の方に新しい倉庫が完成してから、ここは空き家になってたんだ。わたしが町へ着いて、町長さんに初めて会った時に…町長さんが『ここを使ってくださいな』と、言ってくれて…。今は、剣術の道場になっているの」

ラヴィアンは涙を浮かべた目で聞いてきた。

「せんせぇ…ここ…の…道場の名前…は、何ですか?」と。

先生「これといって決まってないね〜。町の人は『ベマ道場』とか…近くに銭湯があるので『銭湯道場』とか、呼んでるけれど…」

ラヴィアン「せんとう…??」

先生「お風呂だよ。公衆浴場のこと。…ここまで歩いてくる前に青い橋があったでしょ?橋を渡ってからある大きな建物は、ここと銭湯だけなんだ。あとは空き家や納屋だから…。酒場もお店もこっちの方には一軒もないし…」

まばたきしたラヴィアンは先生から香る匂いに気付いた。

「……せんせぇ…スースーする、いい匂いがします…。これは……?」

先生「あ…そう?朝、ラヴィアンが寝てる間に…いま話した銭湯へ行ったから〜。銭湯はここからすぐの場所にあるんだ。薬草が入っている緑色のお湯なんだよね。夜になったらさ、一緒に行こうよ」

ラヴィアン「はい…。あ、あの…混浴、ですか?」

先生「へ?あー、そうだね。…男女は分けられてないや。けど…夜はあまり人がいないから…へーきだよぅ」

「……はい。……。あッ!!また…忘れてるッ!!先生が…どーして、ここ…ロマンダにいるのか…聞いてない……」

ラヴィアンは大きな声を上げた。

「…そーだね。わたしも、忘れてた…」

笑う先生にラヴィアンは困った顔をつくった。

「…何で、なんでしょう?あたし、まだ頭がぼうっとしてて…。この国で目が覚めてから…そうなんですけど。半分、夢の中にいるようで……。どうも、いろいろとはっきりしてないんです…そして…いきなり、なんか…とても切なくなってきて、けれども…何が切ないのかよく分かんないんです……」

先生「時間と空間が必要なんだよ、ラヴィアン。……なら、教えるね…わたしが、この国にいる理由をさ」

ラヴィアン「……ぁ、はい……」

片目の女を前にラヴィアンはうなずいた。

居場所(01)

ラヴィアン「そうなんだ…。そんなに…ローラ、強くなったんだ…」

先生「そうそう。『聖剣技』を全て修めてから、他の剣技も全部修得してね…。剣術も、めきめき上達したし…。ローラが騎士団の教官たちから『剣術士』って、認められた後…わたし、“皆伝の証”として『夕霧』を渡したんだよぅ」

ラヴィアンはごちゃまぜになっている記憶をたどった。

「え?『夕霧』って……先生が、あたし達に見せてくれた黒い刀ですよね?あれを…ローラへ…?」

先生「うん。もう、ローラなら使いこなせると思ったから」

ラヴィアン「……せんせぇ…あっさりしてるな〜。あれ…大事な刀だと思ってましたよ、あたし」

先生「うふふふ。ま…大事なものだけど…。ローラの方が上手に使えるかなって。…本気のローラと戦ったら、わたしでもかなわないかも。うふふふふ…」

ラヴィアン「そんな…せんせぇが、かなわないなんて…ありえないですよ〜」

先生が思い返した。

「うふふ。わたしが……35歳の時だった…かな?ローラが『剣術士』になったのは…。それから1年して…わたし、イヴァリースを出たから…」

「へ〜〜。…すごいな、ローラ。……はぁ…。せんせぇ…あたしは…これから、どうすればいいんでしょう……」

ラヴィアンはため息をついた。

先生はにこにこして言った。

「ここの道場の師範代(しはんだい)でもやってみたら、ラヴィアン。わたしがいない時は、わたしの代わりに道場へ来るみんなに剣を教えて、さ…」

ラヴィアンは両手をふった。

「いやいや、それは無理ですよ。あたし……『聖剣技』もろくに使えないし…」

片目の女は笑顔のままだった。

「剣技なんて、一つもできなくていいんだよぅ。ここに通っている子はみんなね、剣術だけを習いに来ているんだ。呂国は徴兵制を採用しているから…軍へ入隊する前から武器の扱いに慣れておきたい子が多いみたい。…訓練や演習だけじゃなくてさ、実戦もアグリアス達と共に経験してきたんでしょう?ここへ来る生徒さんたちは、本当の戦には参加したことがない人ばかりなの。だから、ラヴィアンでも十分に“剣の先生”が勤まるよ」

「………。そう…かな……」

ラヴィアンはうつむいたまま、言葉をもらした。

先生「できるよ、ラヴィアン。あと…10年もしたら、わたしはこの町にいられなくなっちゃうから…わたしの後を受け継ぐ人が必要なんだ〜。しばらくは…みんなに混じって、練習してみて…生徒さんたちがどんなことをやっているのか、確かめてみるといいよ」

「………いいんですか、せんせぇ」

ラヴィアンは顔を上げた。

片目の女はにっこりした。

「ここで暮らして…気が向いた日だけでいいからさ、練習を見たり…実際にやってみたりしてごらん。…こんな広い建物にわたし一人だから…ラヴィアンがそばにいてくれると、嬉しいんだ」

ラヴィアンはじんときてしまい、出てきた涙をふいた。