ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

炎のかたち(01)

漆(うるし)塗りの食台には様々な食べ物と器や皿が並んでいる。

酒のビンは床に直接、置かれている。

片目の女へ別の女は言った。

「先生…以前とは、髪型…変わりましたね…」と。

先生「ん…うん。今日さ、近所にある美容院まで用があって行ったんだ。そうしたら…そこの店長さんが『センセイの髪の長さと、質…。ちょうどイイワ。ネェ、新しい装置の実験台として…クルクルにしてもイイかしら?』って…。で…やってもらったら…こんなふうに毛先がクルクルになって…」

女「ほんとだ…くるくる…。あ、じゃあ…あたしがここに着いた時、先生がいなかったのは…」

先生「そうだねー。わたしが…クルクルにしてもらってたから。…みんな、どうだった?」

女「いや…どうって…。小さい子も…大きな子も…木刀を振るって、稽古(けいこ)してたようでしたけど……。せんせぇ〜、あたし、来たばかりなんですよ〜。詳しいことは分かんないですってばぁ!」

先生「うふふふふ。そっか、そっか〜」

女「あはははははは…。あ、あの…背の高いガッチリした男の人って…なんていう名前ですか?みんなが帰った後に…ほうき持って、さっさかさ〜って、掃除してた…」

先生「えーーと…誰だっけ?」

女「ちょっと、せんせぇッ。あたしが聞いてるのッ!」

先生「うふふふ。ごめん〜。多分…レイム君だ」

女「れいむくん?」

先生「そう。…レイム君はね…兵役が終わった後、海軍を除隊して実家に戻ってきたらしいよ。男女共に、陸軍か海軍のどちらかを選んでさ…15歳か16歳の時から5年間…兵役へ就いて…20歳か21歳になったら、このまま軍人を続けるか、民間人へ戻るかを選択するのね、ここ…ロマンダでは。…呂国は軍事国家だから。レイム君は乾物職人のお父さんが病気で亡くなってしまったので…お母さんを助けて、一緒に暮らすために…故郷へ帰ってきたって…話してた」

女「……いい人…だ…」

先生「レイム君は、お母さん思いでさ…ここの道場へ通っている年下の子供たちの面倒見もいいし…。あと、お母さんと二人で作っている、干物もおいしいし…」

女「ひもの?」

先生「魚を干した食品のこと。港のそばに入(い)り海があるんだ。そこでとれる魚を…レイム君とお母さんは乾燥させて…売りものへ加工しているの。…今は二人でいろんな干物を試作してるみたい。レイム君のお母さんが、わたしのところにおみやげ持って来てくれたときに教えてくれたよ」

記憶の実(02)

先生「そうそう。…ロマンダには、イヴァリースのように黄色いチョコボはいないんだ。ここでの野生チョコボというのはさ、『プックル』と同じ茶色のチョコボと水色のチョコボと薄緑色のチョコボ黒チョコボのことを言うんだよね。黄色と赤のチョコボはいなくて…チョコボ全体の総数もイヴァリースほど、多くは生息していないんだって」

ラヴィアン「……。せんせぇ…ほんとに何でも知ってますね…」

先生「うふふ。この国にはちょくちょく来てて、住んでるから」

ラヴィアン「……『プックル』…もぐもぐ食べてる」

先生「そーだね。…わたしの道場に通っている子の家族が野菜農家をやってて、『七種豆』の袋をよく届けてくれるんだ。わたし一人じゃ、食べきれないから…どーしよっかな〜と、考えてたの。『プックル』の好物の豆が袋に入ってて、良かったよぅ」

ラヴィアン「へぇ。あっ…そうだ。この……赤い実を…食べさせると…『プックル』はトンヌラさんの所まで帰っていく、らしいです。…『道に迷っちまったり、誰も助けてくんねかったら…コレをコイツさ食わせてやって、オラの牧場まで戻ってきんさい』…て、あたしと別れる際、トンヌラさんが手渡してくれたんですけど…」

ラヴィアンが見せた濃い赤色の実を指でつまんだ先生は、それを凝視した。

先生「………。これは…深山でしか採れないといわれる、ピピオの実……。……ラヴィアン、トンヌラさんは“本物”のチョコボじいさんだよ。…すばらしい人だね」

ラヴィアン「は、はい……あの…その実…すごいもの、なんですか?」

先生「…この実がすごい、というよりは……別名“記憶の実”と呼ばれるこれを食べさせることによって、“指定した場所までチョコボを移動させる技術”をチョコボへ仕込んでいるんだもの…。『鳥聖(ちょうせい)』にしか、できないことだよ。そうか……そうやって…ピピオの実って、使うものなのか……」

黙って話を聞いていたラヴィアンは泣きそうな声を出した。

「…………せんせぇ、あたし…ここにいても、いいですか?」

先生「へ?いいよ、いいに決まってるじゃない。…この道場は広いからさ、好きなところで寝てみて。明日、天気が良かったら…この実を『プックル』へ食べさせて…トンヌラさんの牧場まで帰してあげようよ。わたしがお手紙書いて、『プックル』に付けてあげるから。…ね、ラヴィアン」

にっこりした先生は、ラヴィアンの手にピピオの実を戻した。

「……はぃ。はぃ。せんせぇ…あり、がとう…ございますぅ……」

じわりと涙が出てきたラヴィアンは両目をおおった。

先生は隣に立っていたラヴィアンを抱きしめてあげた。

「うん、うん……もう…心配いらないよ……」

ラヴィアンは先生にしがみついて泣いた。

自分一人では、何もできない。

ここでラヴィアンは自らの無力さを痛感したのだった。

茶色いチョコボは二人の人間へと顔を上げた。

チョコボと目があった片目の女が笑顔でうなずいたため、チョコボはまた食べ始めた。

記憶の実(01)

道場の玄関には茶色いチョコボがしゃがんでいる。

ラヴィアン「このコは『プックル』という名前なんです。トンヌラさんが『一番賢いチョコボだで〜』って、言ってました」

先生「へ〜。『プックル』か。……ねぇ、『プックル』、何か欲しいものある?」

その声にチョコボは、片目の女を見た。

先生「………うん、うん、《ポロフ豆が食べたい》んだね。あとは…《お水も飲みたい》…と」

中腰の先生はチョコボの頭をなでなでした。

チョコボは目をつぶった。

ラヴィアン「せ、せんせ〜、チョコボの気持ち…分かるんですか!?」

先生「まー、だいたいね」

ほほえむ先生にラヴィアンは驚いている。

「すっごいな〜、さすがは先生ッ!!えっと…何ていうの…。多芸多才…ですね」

「うふふふ…。ラヴィアンも『チョコボ語』は覚えられるよ」

先生は道場の奥へと進み始めた。

ラヴィアンはついていった。

道場の壁には、一振りの剣が飾られていた。

どこかから、時計の音が聞こえる。

深い皿に入れられた豆をチョコボが食べている。

豆の皿の横には木製の樽(たる)に入れられた水があり、樽の下には平らな皿が置かれている。

チョコボを見ていたラヴィアンが口を開いた。

「……この国のチョコボは、茶色いんですね。『山チョコボは、茶色だでよ』って…トンヌラさんは教えてくれましたけど…」