ふるいものがたり

いらっしゃいませ。 このサイトには『ファイナルファンタジータクティクス』の二次創作小説があります。

再会(02)

「……士官学校の時も、計算は不得意だったものね」女は言った。

「それ、それ、それ。…『砦の最上階から発射した弓矢の有効射程距離』なんて…算出できるかってーの。あっはっははははははははっ…。ものすごい逆風の中、弓矢を発射したらどうするんですかね?戦いの時、天候は選べないじゃありませんか?あっはっはははははっ…。お客さん…話がわっかるわ〜」日光が射し込んでいる部屋で女性は相手を見た。

「…久しぶり。教官になっていたなんて。…出世したんだ、ローラ」女が言った。

「!!!!…ひ、ひぃあああああああああああ〜あああああ〜〜ッ!!!!?…どどどどど、ど〜いうコト、どういう、コト!!!??ア、ア…アアア、アリ、アリ、アリシ、ァリシア…。アリシアアリシアアリシア〜ッ!????えッ!??え、えぇッ!?なに、なんで…!?変わってない…!?よ?えッ!?どーして?若くて…可愛くて…キレイ…。え、ええ、えぇーーーッ!?……?????」ガタン、とイスを倒して立ち上がった女性は、ただただ驚該(きょうがい)している。

アリシア、と呼ばれた女は鳥の子色の髪に赤い髪留めを付けていて、上半身にぴったりとした樹脂製の服を着ていた。

さらに腰の左右には各々異なる忍者刀を差している女へと巻き毛の髪の女性は抱きついた。

「あ、ああ〜、あ〜、本物だ。本物のアリシアだ〜〜ッ!!!すごい、すごい、すごいよ、コレ!!ど〜して、ど〜して、なの!?あー、アリシア〜ッ!!!アレ、コレ…懐かしい!!」女性はぴょんぴょん飛び跳ねつつ、女の左腕にはまっている腕輪を触った。

「…ああ〜。アリシアアリシアアリシア〜。また、会えるだなんてッ!!でも、ど〜して?ど〜して…?今になって…?それにしても…顔の肌、しっとりつやつや…。アタシが子供産む前より…イイよ〜。ね〜、何?何がどうなっているの?アリシア…教えて、教えてよ…ね〜ね〜」ローラ、と呼ばれた女性はぎゅっと、アリシアを抱きしめている。

……そう、だった。

わたしの…名前は……アリシア、というんだった…。

そして…姓は……ハーディーだったな…。

アリシア・ハーディー………。

これが…わたしの…わたしの……。

表情をゆるめた女はくっついている年上女性へ言った。

「……うん。あれから…どうなったのか、教えるよ。長い話になると思うけど…時間は大丈夫?」と。

「ぜんぜん大丈夫〜ッ!!!今日の課業時間はもう終わってるもん!!家計簿なんて、もーどうでもいいやぁ!!夫だって、今日は戻らないしさ。あっはっはははははっ……」ローラは泣いて笑った。

「ふふふふふふ…。さて…どこから始めると良いかな?……ローラが…腕にケガをしてから…で、いいよね?」アリシアはにっこりした。

再会(01)

城内の階段を登った男性と女は一つの部屋まで歩いた。

部屋の入り口には【団長室】と書かれた板が打ち付けられている。

「ここです。ここが団長様とローラ教官のお部屋です。今…ボクが取り次ぎますので、お待ちください」男性は女へ説明してから、大きなドアをたたいた。

コンコンコン、と音がした。

「…失礼します。……ローラ教官。教官のご友人と申される方が、おいでになりましたが」男性は僅かにドアを開くと、首だけをその中に突っ込んで話した。

女性の声が聞こえた。

「あ…そうなの?バーナード君、顔だけじゃなくて…全身を部屋に入れなさい。重要な報告の際も、そんなんじゃダメでしょ?」

「す、すいません、教官。おっしゃられる通りです…」男性が詫(わ)びるや、女性の声は返した。

「…お客さんには入ってもらって。アタシ…今、手というか…目を離せないから。そこらへんのイスに座ってもらってちょうだい」

「はい」男性は答えてから、部屋の外にいる女へ向き直った。

「…と、いうことですので…。教官は机に向かって、何やら書いているご様子です。長イスがありますから…そこでお待ちください。それでは、ボクはこれで」男性は会釈してから、階段を降りていった。

男性へ「わざわざありがとうございました」と女は小さな声で述べてから、少しだけ開いたままのドアを開けて、【団長室】に入った。

ドアを閉めた女は、部屋の入り口近くに並んでいる革張りの長イスを見た。

長イスの表面はバリバリに割れている。

…古いものなのだろう。

女も知っている騎士団の紋章が描かれた旗がある。

また、『王家の紋章』も壁にある。

盾や剣が飾られている。

戸棚の中に収納されているのは、厚い冊子だ。

こちらに背を向けて座っている女性は書類へ何かを記している。

女性はゆったりとした異国の衣に身を包んでおり、その衣の色は柳色であった。

その女性が口を開いた。

「ごめんなさい、お客さん。今ですね…難解な計算の途中なんですよ。アタシ…昔から…数学が苦手でして。今はね…家計簿つけているんです。夫がいつもは、つけているんですけど…4日前にザランダまで会議に出かけて…それで。…夫は事務作業を長くやってたから…こういうのは上手なんですが。息子が帰ってくるまでに終わらせておこうと思って…今、がんばっているところなんです」女性の髪はゆらゆらしている。

水中花(02)

…………襲撃、と言った。

何に…襲撃されたというの?

竜巻や…天災の類?

それとも…モンスターの群れ?

いいや…それは考えにくい。

ならば…人?

王家に反旗を翻す…武装集団か、何か?

ゲオルク・マインドル……とは、いったい誰なのか?

そもそも……それが起こったのは、いつのことなのかしら?

竜巻や火山の噴火よりも後なのか、それよりも前なのか……。

女は腕を組んで考えこみつつ、歩いていた。

…国王の宮殿を破壊したい、と狂気に満ちた瞳をしていた女と、同一人物とは思えないほどに女は落ち着いている。

女はしばらく町を東へ進み続けた。

終戦後、組織解体された国軍の本部の一つであった『ヘルベルト城』という城が、王都ルザリアの東端に建っていることは、女も知っていた。

ただし、女はその城内へ入ったことはなかった。

今現在が何の月の何日なのか、そして今現在の時刻はいつなのか、さらに今現在は四季でいえば何へ該当するのか。

女はこのことをまるで理解できないまま、王都を横断した。

疲労感も空腹感も感じない女はひたすらに考え続けて、城の前まで来た。

城門はごつごつした造りで、『ニューンベルク城』よりもあっさりとしており、長方形のくぼみには『ヘルベルト城』と彫られている。

女は門番兵がいないため、そのまま入ってみた。

女がきょろきょろしていると、一人の男性が通りかかった。

「ん…おや、お客様ですか?」女よりも若そうな男性は、微笑んだ。

「あの…。ここは……『ルザリア聖近衛騎士団』が使っている城でしょうか?」女は男性に聞いてみた。

「ええ、そうですとも。ここへは、誰かをおたずねで?」男性は笑顔のまま、返答した。

「はい。…えー…その……ギレ・ガーランド団長様か……フレシア…先生、いますでしょうか?」女は難しい顔をしながら、他人の名前を口にした。

「ギレ、ガーランド…フレシア…せんせい…は、ここにはいませんね…。他に…お捜しの方のお名前はご存知ですか?」

男性は真摯(しんし)な態度で女を手助けしようとしてくれている。

……この国で生きる者にしては珍しい。

相手が誰であれ、相手へ気を許してはならない。

この乱れた国における、基本的な処世術だ。

少しでも油断すると、寝首をかかれてしまう恐れがあるではないか。

「…な、なら…そうだな………あっ。…ローラ、ローラ・ファガルスという団員は、在籍しておりますでしょうか?」女はこれまで忘れ果てていた人物の名前を口にした。

「ローラ・ファガルス……もしかして…ローラ教官のことかな?…教官なら、いますよ。…ボクが案内しましょう。こちらへどうぞ」男性はほがらかに言い、歩きはじめた。

「…教官!?ローラが……?」女の言葉に男性はうなずき、「はい。…きびしい教官なんです。ボクも仲間も怒られてばかりでして…。『聖剣技』がなかなか、一振りで出せるようにならないんですよ。ボクには才能がないのでしょうか?…ローラ教官の旧姓は、ファガルス…というんですか?知らなかったなぁ〜。…教官の…ご友人ですか?」と、逆に女へ質問した。

「は…は、はい。古い…友達でして……」女は答えた。